罪人と被害者
心細くてそう呼べば、ゆっくりと瞼が開いた。
「…ん…」
軽く身じろぎして、肩と首を回して。
「あ、はよ」
「…お、おはよ」
「なんだ、起こしに来てくれたのか」
寝起きだから、おじさん少しとろんってしてる。
真面目そうな顔からは想像のつかない油断した顔に、ちょっと見入った。
「9時か、もう少しゆっくりしようかと思ってたんだが…まあいいか」
つけたまんまの腕時計を見た。
「…おじさん。ベッド」
「ああ…。仕事がたまっててな。リビングでやっていたら、そのまま眠ってしまった」
うそだ。
だって資料はガラスのテーブルの上で、ソファからは距離がある。
そのまま、というのは語弊があるだろう。
「…」
「どうした?…ああ、腹が減ったから起こしに来たのか、ちょっと待ってろ」
そういう問題じゃない。
そう言おうかと迷ったけど、なぜか癪にさわるのでやめた。