罪人と被害者

気づいたら、そう言っていた。


…料理なんて大嫌いだったはずなのに



「え?お前料理できるのか?」

やけに驚いたように顔を上げ、なんだか恥ずかしくなった。

「そ、そんな難しいもんは無理だよっ、ムニエルとか、そういうつけて焼くだけみたいな」

「横文字!?お前…す、すごいな」

純粋に、褒められた。
それがなんだかむず痒くて、つい麺に目を向けてしまう。

「おじさん、ムニエルって何かわかる?」

「なんだかよくわからんがすごそうだ」


「ええー…」


意味もわかってないのに褒めたのだ、とちょっとがっくししたけど。

嬉しい。


美味しいの作って、もっと褒めてもらいたい。


「…しょ、しょうがないなぁー。
材料さえあれば作れるよ」

「わかった。仕事の帰りかその前でいいか?」


それで瞠目した。

「え?今日仕事なの?」


やけにゆっくりしてるから、ないものだと思っていた。

「ああ、午後から……」


そこでふと、気付いたように。
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