罪人と被害者
「べつに、無理していることないからな」
「…え?」
変わらない表情に、どくんと心が嫌な音を鳴らす。
『一一嫌だ。
嫌だ、嫌だ、そんなの一一嫌だ』
全神経がその言葉を嫌う。
遠回しに“いるな”と言っている、その言葉を。
「身売りをしているお前がろくに学校に行ってるとは思えないが……ここにいたって一人なだけだ。
別に俺は監禁を強いてるわけじゃないし、家に帰ってから俺の帰る時間に合わせてこっちへ来てくれても一一おい?」
つらつらと無機質な言葉を並べるおじさんと、言葉を失っていく僕。
ああ、そう。邪魔、なの。
どうせ、古いのなんか一一「お、おい!」
おじさん、怖い顔をしていた。
「え、なに?どーしたの?」
麺を取りながら笑顔を無理やり作って答えれば、怒ったような顔をされた。
「どうしたのじゃないだろ…!?
今かなりやばい顔をしていたぞ?」
「やばいって何さー、可愛いってこと?」
「…おい、誑かすなよ…!!」
ガタッと、手をついて身を乗り出してきた。
揺れるガラステーブルに、揺れるスープ。