罪人と被害者
「は、はあ!?
わかって言ってんの!?」
今度は僕が机を叩いた。
その振動にも音にもビクともしない。
「みすみす青少年を犯罪に走らせるわけにもいかないし、何よりお前わかってるんじゃないのか?」
「なに…」
「このまま大人ひっかけて生きてったら、ろくな目に合わないって」
…そう。
わかってるさ、そんなこと。
シャワーにジジイが行ってるすきに金だけ奪って逃げてきた。
体なんか売れない。
でもいつかきっとバレて、その時は僕の寿命なのではないかと。
なんとなく予感はしていた。
だから転々と商売の場所を変えたし、バレないように足のつかないように十分配慮はしてきた。
でも、いつかはってわかってた。
「せいぜい一年食いつなげたらいいんだ。
そこからは働ける」
「今家出してきて何日めだ?」
「二ヶ月」
「…思ったより持ってるな」
おじさんはジロジロと僕を見て、「まあ顔だけは小綺麗だからな」とつぶやいた。
「でもロクな職につけないだろ」
「いいんだよ、死にたくないだけ」
「…勉強もさせてやる。
ここに住め」
「だって勉強したって学歴がなきゃ、」
「俺の事務所に来い。それ専用の知識入れときゃ雑務くらいはできるだろう」
「……え、なんの仕事?」
「金融屋」
「なんかそんな気してたんだ!!」
「安心しろ、ヤクザとのパイプはかなり太い」
「それも闇のほうか…!」