罪人と被害者


◇◇◇



「…適当に座れ。安心しろ、掃除だけはしてある」


アングリと口を開けたままの男の子にそう言って、部屋に案内した。


結局、俺はこの子を家に連れて帰ってしまった。


まさか本当にホテルで抱くわけにもいかないし、聞けば眠る場所がないというし…仕方ない。


今夜だけ泊めて、あとは家に帰そうと決めた。



一人暮らしだから気兼ねなく招けた、ということもある。



「…おじさん、やっぱり高給取り?」


「その言い方はやめろ。…ただの会社員だ」

「ただの会社員が3LDKのマンションの最上階に一人暮らし?聞いたことないねぇ」

「俺の同僚はみんなこんなもんだ」

「あんたの基準で考えんなっつーの」



はあ、とため息をつかれた。

そしてなぜか「風呂は?」と聞かれる。

来て早々図々しいな、と内心思いながらそこを曲がったところと教えると。


「んー、じゃあ入ってくる。おじさん待っててね?」



寝るな、ということか。

まあいいやと冷蔵庫からビールを取り出して、プシュッとプルタブを開けた。




< 5 / 25 >

この作品をシェア

pagetop