罪人と被害者


「…にがて?」


「だって、こわいじゃない?」


くくっ、と嘲笑うように笑う目は一一世界を恨んでいた。



「自慢じゃないけど、僕は正真正銘の善意って見たことないんだよ。

善意をもらっても、それはなにかしらの向こうの利益…そんなことばっかり。

結局、人は自分が可愛いんだ」


「それは…」



それは、俺の思考だった。


人は自分が可愛い、だから、自分の手が汚れるのを嫌がって一一手を差し伸ばさない。


そういう生き物なんだ。

差し伸ばしたとしても、それは『何か』があるから。


善意の先の、利益目当て一一



「人間って、そんなもんでしょ。
所詮餌を撒かなかきゃ動かないの

金や肉欲だったり名誉だったり一一みんな目先の人参を追う馬」



ひひーん、なんて馬のモノマネをして。


「はい、にーんじん♪」


自分の体を覆うタオルを捨てた。



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