君色ドラマチック


疲れた目をこすり、コーヒーを入れてこようと席を立とうとした時だった。

オフィスのガラス扉を開け、颯爽と入室してきた男が一人。

背がすらりと高く、長髪とまでは言わないけれど男の人にしては長めの髪を揺らし、彼はわき目もふらずに私の元へ歩いてくる。


「はい、新作のデザイン。これで全部だから、よろしく」


そう笑顔で言うと、クリアファイルを私に差し出す。


「レオンさん、デザイン上がったんですかー?」

「私にも見せてください」


同じ部署の女の子が、二人寄ってくる。

二人とも専門学校を出たての、若くてオシャレな女の子だ。


「ああ、いいけど……」


彼──うちのアパレル会社のデザイナー、結城玲音が愛想良く返事をすると、後輩二人は私の手からファイルをひったくるようにして持っていき、隣のデスクで広げ始めた。


「わあ、素敵!」

「ほんと。これなんか、すごくキレイな色使い。早く着たいな~」


着たいって言ったてね、それは来年の春夏コレクション用のデザインだから。鬼さんに笑われるよ。

心の中で毒づくと、結城が「はいはい」と後輩たちからファイルを奪還した。


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