君色ドラマチック
あのときの結城の優しい瞳を、私はまだ克明に覚えている。
『これからもずっと、一緒に服を作ろう』
色覚異常の壁は思ったよりずっと高く、憧れだったファッション業界で生きることを諦めかけていた私。
そんな私にとって結城の申し出は、下手な愛の告白よりも、ずっとずっと嬉しかった。
なのにどうしてだろう。
結城のコネで入れてもらった会社で、パタンナーとして結城のデザインした既製服のパターンを作って、充実した毎日を送っている。
それなのに、私の心は以前のように満たされなくなっていた。
私はまるで、金魚のフンみたい。
結城の後ろをついているだけ。
そろそろ自立できるようになっていないと、いけないような気がする。
人には何が起こるかわからない。
結城が私を死ぬまで必要としてくれる保証は、どこにもないのだから。