君色ドラマチック
「早く着たいなら、早くパターン作ってもらわなきゃな」
そう言って、優しく私の机にそれを置いた。
後輩は舌打ちでもしそうな顔をしたけど、それは一瞬のこと。
すぐに結城に向き直り、可愛いと自分で思っているのだろう上目づかいで、猫なで声を出す。
「レオンさん、今度ご飯連れてってくださいよ」
「お仕事の話、色々聞きたいな」
おーえ。男の前でだけくねくねして、恥ずかしくないのかね。
そっぽをむいて舌を出していると、結城の声だけが聞こえてきた。
「そうだな。じゃあ、デザイン部にも声をかけておくから、お店が決まったら教えて」
それは、みんなで飲みに行こうということ?
「えー、いいですよお、レオンさんだけで」
「俺ひとりで二人も満足させるなんてできないから。もっと面白い話ができる男を見繕っておかないと。じゃあな」
笑ってごまかしたな。まあ、いつものことだけど。
結城は大きな歩幅で歩くと、さっさと部屋を出ていった。
シンプルだけどシルエットがキレイに見えるシャツを着た彼の姿を、後輩はいつまでも見送っていた。