君色ドラマチック
他のブランドなんて。
新しいデザイナーに出会うたび、私は自分の色覚異常のことを説明して、頭を下げなきゃいけないんだよ?
『これは何色ですか』って、膨大な服の色を、全部説明させなきゃいけないんだよ?
そんな人間と、誰が喜んで仕事をしてくれるだろう。
「まあ、目のこともあるし……しばらくは、俺のブランドから外されることはないと思うけど」
結城の声を聞きながら、まるで自分の目の前にモノクロのフィルターがかかっていくような気がした。
結城と居るときだけは極彩色に見える世界が、無彩色に戻っていく。
今、結城……絶対言っちゃいけないことを言った。
目のことは、あなたの口から言われたくなかった。
「……慧?慧、顔色が悪いけど」
「そ、う……?」
まるで貧血のときみたいに、頭がずしんと重たくて、体に力が入らない。
「慧。しっかりしろ。厳しいことだって言うけど、俺は絶対にお前の味方だから」
結城が強く、私を引き寄せる。
彼の胸にかかったブルーの社員証のストラップだけが、視界に鮮やかに写った。