君色ドラマチック
「本当に……?」
「当たり前だろ」
結城は小さい子供にするように、私の頭をなでると、おでこにキスをした。
そして、唇にも。
「大好きだよ、慧」
じゃあ、どうして意地悪をするの。
「安心して」
じゃあ、どうして私を不安にさせるようなことをするの。
「大丈夫だから」
何が?
なにが大丈夫なの。
もしかして結城は、私に同情しているだけなの?
あの卒業制作のとき、ひとりでうなっていた私に手を差し伸べた時から。
結城は優しいから……情が移った私を、捨てられないだけ?
そんなの、だめだ。
このままじゃ、私たちは二人でもがきながら、流れに飲まれて沈んでしまう。
そう思っても、私は結城の胸を、その温かい手を、拒絶することはできなかった。
彼がくれる優しい言葉を、必死で信じようとしていた。