君色ドラマチック
3.嘘と秘密
数日後。
櫻井さんに頼まれていたパターン2点が、〆切よりずっと早くできあがった。
決して手を抜いたわけじゃない。
ぼーっとあれこれ考えるより、CADに向かう方が楽だったから、家でもそうしていただけ。
さっそく社内メールでファイルを送信すると、すぐに返信が来た。
『ありがとう。さっそく仮縫いに出すから、できたら確認しに来い。また連絡する』
メールまで俺様口調。相変わらずムカつくやつ。
しかも、仮縫いができたら、私も見なきゃいけないんだ……それはパタンナーとして当然だけど、できれば櫻井さんには会いたくない。
また同じようなことを言われたら、再起不能になりそう。
結城との間は、相変わらず……というか、かなりドライになっている。
彼は忙しいらしく、連絡がめっきり減った。
社内でも社外でも、あまり顔をあわせなくなった。
この前部屋に呼ばれたときから、そう時間は経っていないのに。
櫻井さんとの一件があってから、急に結城のことを遠くの存在に感じ始めていた。
そのまた数日後。夕方、デスクの上の電話が鳴った。