君色ドラマチック
「はい、パターン部杉原です」
受話器を取ると、その向こうから低い声が聞こえてきた。
『デザイン部櫻井です』
げっ。出た、宇宙人。
「はい……」
『この前の仮縫いできたから、またミーティングルームに来るように』
「今すぐですか?」
『そう』
こっちの都合も聞かないで……まったく、勝手なひと。
「わかりました」
受話器を置くと、課長が聞いてきた。
「どうかした?おでこにすごいシワが寄ってるけど」
はっ。どうやら、全部顔に出ていたみたい。
「はあ……櫻井氏に呼び出されたので、行ってきます」
「そんなに嫌いなのね……終わったらそのまま帰っていいわよ」
課長は同情を露わにした表情で、白いレースのハンカチを振って見せた。
私は帰る支度をし、重い足取りでミーティングルームに向かう。
ドアを開けると、櫻井さんの他に企画部の社員と、縫製工場の社員がいた。
二人きりじゃないとわかってホッとすると、彼らに挨拶もしないうちに櫻井さんが近づいてきた。
「よくきた杉原。ほら、仮縫い」
彼が指さした先には、私がパターンを担当した服のサンプルが、トルソーに着せられていた。