君色ドラマチック
私は結城に渡されたファイルの中身を、ぱらぱらと流し見する。
また難しそうなデザイン画描いてきて。
これを立体にするために、パタンナーがどれだけ苦労するか……文句を言ってやらなきゃ。
そんな風に思っているのに、なぜかマウスを持つ手が軽くなったような気がした。
会社にいるときの結城は嫌い。
八方美人で、たくさんの女の人に良い顔をして。
でも、そうじゃないときの結城は……。
定時の鐘が鳴ると同時、私は席を立った。
「あら、今日は早いのね。仕事はお持ち帰り?」
「はい。土日で進めてきます。お先に失礼します」
私は早口で課長に挨拶すると、結城に渡されたファイルをバッグに入れ、その場を立ち去る。
途中でお手洗いに寄り、手早く化粧を直すと、真っ直ぐに出口に向かった。