君色ドラマチック
人を殴る結城なんて、今までは想像できなかった。
けど、さっきのように怒って我を忘れる結城なら、やりかねないかも。
「結城って、私のこと好きだったんだね……」
思ったことが、ぽろりと口から出てしまった。
「は?なんだそれ?」
「あ、うん、いや、結城って、私のこと女として見ていないというか、長く一緒に居すぎて同志というか親友と化してしまったのかな、なんて思ってたから……」
「そんなことあるわけないだろ」
こん、と拳で軽く頭を小突かれた。
「同志でも親友でもあるけど、慧は俺の彼女だ」
よどみなく言われたそのセリフが、じいんと胸に沁み込む。
そうかあ……私たちちゃんと両想いだったんだ……。
「なにほっこりしてんだよ。ほら、立って。風呂入って寝るぞ」
「ん?早くない?」
時計を見ると、まだ9時にもならない。
明日は土曜で会社は休み。
何も言わなくてもお泊まりすることになったのはわかるけど、寝るには早すぎるんじゃ。
いつもなんだかんだで夜更かしして、いつの間にか寝てたというパターンなのに。
「……いいから、来い」
いつのまにかお湯をためていてくれたらしく、ついていったお風呂場からは、いいにおいがした。