君色ドラマチック


今度はゆっくり優しく服を脱がされる。

結城も一糸まとわぬ姿になると、一緒に浴室のドアを開けた。


「わあ」


バスタブ一面に、ふわふわと浮く綿菓子のような泡。

その隙間から、バラの香りがする。


「もらったんだ、仕事上のつきあいで」


ふと、昨日すれ違ったパタンナーの女の人が脳裏に浮かぶ。

こんな映画みたいになるバスミルク、なかなか男の人はお土産にしないんじゃ……。

一瞬で胸の中に靄がかかりそうだったけど、それは結城によって阻止された。


「ほら、お姫様」

「ひい!」


子供を抱き上げるみたいに、両脇に手を差し入れられて持ち上げられると、そのままバスタブへ。


「いきなり入っていいの?」

「ああ。この泡で全身を洗うのが、ヨーロッパ式だって」


次いでバスタブに入ってきた結城が、私に背中を向けさせ、膝の上に座らせる。


「ここ日本だし!」

「はいはい。そう恥ずかしがるなって」


そう言われても、この状況が恥ずかしくない人は少ないんじゃあ。

しかも、結城の裸を見るのだって久しぶりで、見られるのも久しぶりだし。


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