君色ドラマチック


「しかも洗ってるし!」


いつの間にか、結城の長い指が私の腕を撫でるように洗っている。


「だって、慧臭うし」

「はっ!?」


臭うって、臭うって言った!?

そんな。キモイって言われるより、ブスって言われるより、『クサイ』がこの世で一番きつい……。

ショックを受けて固まっていると、結城の腕が、私の胸の前で交差した。

後ろから、抱きしめるように。


「他の男のにおいがする」

「は……」

「何もしてないとしても、嫌だ」


結城の顎が肩に預けられ、その髪が私の頬をくすぐった。


「ねえ、だから……大丈夫だって」

「わかってる」

「あの……私も、好きなのは結城、だけ、だから」


まるで初めて男子に告白する女子中学生みたいにドキドキした。

途切れ途切れの言葉は、結城にどう届いたんだろうか。

そっと振り返ると、その表情を見る前に、軽くキスをされた。

さっきのエレベーターの中とは違う、ついばむような優しいキス。

それは次第に深くなって、結城の腕が力強く私を抱きしめた。



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