君色ドラマチック
「いっそ、俺のところに来て一生嫉妬させた方が、恋人としてはうまくいくんじゃないか?」
「あはは……たしかに、嫉妬は効果抜群でしたけど」
毎日あんな状態で、DVに発展したりしたら絶対に嫌だし。
「まあ、いいよ。無理強いするつもりはないから。結城に裏切られたらいつでも来いよ」
櫻井さんは冗談ぽく言うと、すっと立ち上がってコーヒーの空容器をゴミ箱に投げ入れた。
「じゃあな」
櫻井さんと別れ、パターン部へ戻ろうと歩く。
いつものモード系に戻った私を振り返る社員は、もう誰もいなかった。
ま、モテなくてもいいけどね。私には結城という彼氏がいるし……。
って、これが依存ってやつ!?
やばい。すべての基準が結城とか、私、自分がなさすぎる。
櫻井さんの言葉が、頭の中でこだまする。
私、このまま結城に依存してていいのかな……。
軽かった足取りが、途端に重くなる。
とぼとぼとミーティングルームの傍を通りかかったとき、部屋の中から誰かの声が聞こえてきた。
あらあら、ちゃんと扉が閉まっていないみたい。