君色ドラマチック
「どうもありがとう。森さんのおかげで、なんとかここまでできました」
まるで図ったようなタイミングで聞こえてきた声は、結城のものだった。
スルーしようと思っていた足が、無意識に止まる。
森さんって、誰だっけ?
「いえ、私はパターンを引いただけです。裁断や縫製は、全部結城さんがやったんですもの」
「そのパターンが、一番苦手なんですよ。かといってそこを適当にしたら、良いものはできないし。これだけは失敗するわけにはいかないですからね。助かりました」
結城に返事をするのは、女の人の声。
もしかして、櫻井さんが紹介したという、外部のパタンナーさん?
あのとき、街で一緒にいた……。
盗み聞きなんていけないと思いながらも、まるで金縛りにあったみたいに、その場から動くことができない。
「あの、結城さん」
話題を転換するように、女性の声に緊張感が混じる。
「これからも、ぜひ一緒にお仕事させていただけませんか。私、結城さんのデザインが大好きなんです」
まるで告白するような決心を込めた声に、こちらがどきりとしてしまう。
一緒にお仕事って……。