君色ドラマチック
「……あ、ああ……そうですね。また、いつか一緒にやる機会があるといいですね」
明らかにはぐらかすような、結城の返事。
「私のパターン、ダメでしたか」
「そんなことない。とてもよくできています」
「じゃあ……結城さんのデザインのすべてをとお願いしているんじゃないんです。一部でもいいので、今担当されているブランドも、協力させてください」
今担当されているブランドも……『も』ってことは、やっぱり、今のブランドの服とは別のものを、森さんに依頼したんだ。
森さんはフリーのパタンナー。単に仕事が欲しいからか、それとも本気で結城と仕事がしたいのかはわからないけれど、簡単には引き下がらない。
「すみません。それはちょっと……」
とうとう結城が謝った。
「もしかして、例の彼女に遠慮しているんですか?彼女だって、仕事量が減った方が楽になるでしょう?」
不穏に高鳴っていた胸が、ひときわ大きく跳ねる。
『彼女』って、もしかしなくても私のことだ。
結城、森さんに私のことをどういうふうに話していたんだろう。