君色ドラマチック
「突然すみません。私、フリーパタンナーの森といいます」
ぺこりと、森さんは礼儀正しくお辞儀をする。
ふわりと内巻きにしたボブヘアがよく似あっている、少しぽっちゃりした可愛い女性だ。
歳は、私より少し上だろうか。
「結城さんのことで、少しお話できませんか」
私に?何の話だろう。良い話じゃないということだけは、本能が察知しているけど。
「ごめんなさい、仕事中ですので」
フリーの森さんと違い、私は会社員。
いつまでもデスクを空けておくわけにはいかない。
「じゃあ……お仕事が終わった後に、お時間をいただけませんか」
嫌だ。
きっと顔に出てしまっているのだろうけど、森さんは気にせずにバッグから名刺入れを取りだす。
「近くのカフェで待っています。きっと来てください」
裏にお店の名前を書いた名刺を押し付けられ、仕方なくそれを受けとる。
すると、森さんはまたぺこりと一礼すると、てくてくとその場を去っていった。