君色ドラマチック
それから仕事がはかどるわけもなく、終業時間を迎えてしまった。
誰か、私に安心して仕事ができる環境をください。
はあとため息をつき、森さんからもらった名刺を裏返す。
そこに書かれた店名をスマホで検索すると、本当に会社のすぐ近くにあることが、表示された地図を見てわかった。
どうせろくでもないこと言われるんだろうなあ。
森さんからしたら、私は商売敵なんだろうし。
「でも……」
結城がいったいどんな仕事を依頼したのかは、すごく気になる。
彼が話してくれるまで待とうと思っていたけど、結城自らが裁断や縫製までする仕事の詳細を知りたいという気持ちに、勝てそうにない。
私は決心すると、指定されたカフェに向かった。
そこは全国展開しているコーヒーショップのチェーンで、わかりやすい看板が出ている。
それが何色かはわからないけど、間違えようがない。
店内に入るなり、奥のソファの席に座っていた森さんが立ち上がり、こちらに頭を下げた。
私も会釈を返すと、コーヒーを注文して、そちらに近づく。
「ありがとうございます。どうぞ、おかけください」
ここはあなたの家ですか?
と揚げ足を取る気にもなれず、おとなしく従い、向かいの席につく。