君色ドラマチック


「早速お話をさせていただいても?」


森さんが切りだす。こちらも、世間話をするつもりはない。


「ええ、どうぞ」


うなずくと、森さんは生クリームがたっぷり乗ったカフェオレみたいなものを一口飲んでから、口を開いた。


「単刀直入に申し上げます。結城さんを、解放していただけませんか」

「解放?」


それはいったいどういう……。


「結城さんから伺いました。杉原さんは色覚異常で、細かい色味がわからないと」


そんなこと、なんでわざわざ部外者に話すの。

結城への怒りが沸く。

うなずくのも嫌で黙っていると、森さんは私を見つめて話を再開する。


「結城さんは、とても才能のある人だと思います。このまま、会社に雇われて終わる人ではないと」

「そうですね」

「彼も、櫻井さんのように、いつか自分のブランドを立ち上げるのが夢だとおっしゃっていました」


そうなんだ。

学生の頃は、みんなそう言うんだよね。私も最初はそう思ってた。

けれどこの業界は決して易しいものじゃなく、会社で一つのブランドを任されるのだって、すごいことだ。それが例え、他の人の名前のブランドの、日本限定レーベルだったとしても。

社会人になって、パターンをひくことしかできない私が、自分のブランドを立ち上げるなんて、夢のまた夢だと悟って諦めるのに時間はかからなかった。

けれど結城は、そういう夢を持ち続けていたんだ。


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