君色ドラマチック
「けれど、彼は言いました。今のブランドを放りだすわけにはいかないと。そうしたら、あなたが職を失ってしまうからじゃないですか?」
「さあ……」
あの優しい結城のことだ。私のことを思って、我慢していることもあるのかもしれない。
けれど私は彼自身じゃないから、森さんの言うことが真実かどうかはわからない。
私の態度にイラついたのか、森さんは少し語気を荒らげる。
「はっきり言います。結城さんの夢を邪魔しているのは、あなたなんです」
夢の邪魔……。
「色弱のあなたに、これから結城さんがステップアップしていくサポートが、じゅうぶんにできますか?無理ですよね。いくらパターンを作るのが上手でも、それだけじゃ」
森さんの容赦ない言葉が、ざっくりと胸に突き刺さった。
言葉が出ない。
呼吸すら止まりそう。
「ここまで言えば、わかってもらえますよね。結城さんの実力と才能を、どうかつぶさないでください」
森さんは一方的にそう言うとさっさと席を立ってしまう。
私は呆気にとられて、呼び止めるのも忘れてしまっていた。
まだ、結城が森さんに何の仕事を依頼したのか、確認していないのに。