君色ドラマチック
「私……結城のコネで入社させてもらって、今までずっと、結城のおかげで仕事ができていました。でも、本当にそれでいいのかなって思うようになって。櫻井さんのもとで修行して、もっとパタンナーとして自分に自信を持ちたいと考えたんです。結城から離れて、自立しようって」
昨晩ベッドの中で考えたセリフは、課長を黙らせた。
用意されたものだけど、その言葉は私の真実で……でも、言えない部分をたくさん隠している。
「一か月後、来月末には退職したいと思います」
「急すぎるわ。まさか……だから結城くんのパターンを早く仕上げたって言うの?」
「ごめんなさい」
たったの一か月でも、私にはとても辛い一か月になるだろう。
たまった有休消化の期間を除けば、あと3週間くらいだけれど。
頭を下げる私に、課長はため息で返す。
「結城くんには相談したんでしょうね?」
してあるわけがない。
私はふるふると首を横に振った。
「じゃあ、これは受け取れないわ。社会人として、この会社で一番お世話になった人に、何も言わずに辞めるなんて、許されないわよ」
課長は両手を自分の脇に挟み、辞表の受け取りを拒否する。