君色ドラマチック
『ありがとう。また連絡する』
結城からの返信だ。
〆切より2週間以上も早かったことには、何も触れていない。
良かった。帰りにスマホを解約したら、あとは社内で会わないように気をつけるだけ。
ずっと社内では私との交際を隠してきた結城だもの。会社で派手な行動はしないだろう。
メールの画面を閉じようとし、結城の返信の下に、元々私が送った本文が見えた。
『>全部、終わったよ。』
終わったよ、結城。
私とあなたの、最後のコレクションが。全部終わった。
終わっちゃったんだ。
もう、一緒に服を作ることはない。
一緒に食事をすることも。お風呂に入ることも。隣で眠ることも。
ありがとう。
結城と出会ってから、とても楽しかったよ。
その声であなたが洋服への愛を奏でるとき、無彩色の私の世界に、色が着いたんだ。
今思えば、なんてドラマチックな日々だったんだろう。
足かせだった私だけど、やっと決心がついたよ。
どうか、もっと大きく羽ばたいて。
たくさんの人に、あなたの鮮やかな夢を、見せてあげてね。
ありがとう。
ありがとう。
さようなら、結城。