イジワル上司の甘い求愛

『ごめん、チャキはそんなんじゃないんだ』


砂埃のするグラウンドで卒業式の日に振られた思い出が鮮明に蘇る。

気まずそうに視線を反らした『太郎さん』と目の前で私の反応に困ったように眉尻を下げている『浦島さん』が重なる。


そういえばあの時、『太郎さん』にとって私はどんな存在だったんだろう？


そして、今の私は『浦島さん』とってどんな存在なんだろう？

さっきからそんな考えが頭の中をグルグルと回っている。

答えなんて分からないというのに、何も答えない私に業を煮やした様子の浦島さんが口を開く。

「ようやくまた食事にいける関係になったんだ。これからも時々こうして誘っていいかな？」

「……はい」

私は浦島さんの問いに、まるでため息をつくかのような声で頷いた。