イジワル上司の甘い求愛
「浦島さん、私卒業式のこと忘れてなんかいません」
さっき答えることが出来なかったこと。
忘れるわけないってこと、忘れられないってこと伝えたかった。
「それに私が4年間も一方的に避けてたっていうのに、浦島さんがそんなこと思って接していてくれてたなんて、全然気づかなくって……」
「いいんだよ。俺がそうしたかっただけだから」
目を真ん丸くしていた浦島さんが、目を細めて少しだけ屈んで私の顔を覗き込む。
浦島さんの顔があまりにも近いことに気が付いて、大混乱の頭がさらにグルグルとフル回転している。
「私、浦島さんのこと……」
そこまで一気に捲し立てるように喋った私の右手に、繋いだままだった浦島さんの左手の無機質な素材の冷たい何かが触れた。