イジワル上司の甘い求愛
触れたものが何か、アルコールや浦島さんとの一連のやりとりで浮かれていた私の頭を一気にトーンダウンさせる。


上気した心の中に、どす黒いドロドロとした感情が決壊したダムのように一気に流れ込んでくる気がする。


そうだ、浦島さんには玲美さんっていう婚約者がいるんだ。

自ら握った浦島さんの左手を、払いのけるように離す。

一瞬、きょとんとした表情をした浦島さんがきっと私の視線の先にあるものに気が付いて、すぐに左手をポケットに突っ込んだ。


浦島さんの左薬指に光る指輪の固さと冷たさがやけに右手の感触に残っていて困る。

浦島さんの小さなため息が聞こえてくる。


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