イジワル上司の甘い求愛
電車に揺られながら窓ガラスに映る自分がなんだか泣き出しそうな顔していることに気が付いて、ふいに頭の中に4年前のあの出来事が呼び起こされる。
浦島さんと、婚約者の玲美さんの熱烈なキス。
それから、浦島さんの手に触れた瞬間の無機質で冷たい指輪の感触。
はぁぁぁぁ。
ため息とともに大きく肩を落とした私はもう現実を思い知るしかない。
浦島さんには婚約者がいること。
社長の大事な一人娘の玲美さん。
4年間も浦島さんを避け続けていた間に、私と浦島さんの間には取り返すことの出来ない距離が出来ている。
諦めるほかないんだ。
胸に沸き起こった好きという思いは、封印しておこう。
鼻の奥がツンとして、私はゆっくりと電車の揺れに身を任せながら瞼を閉じた。