イジワル上司の甘い求愛
太郎さんに隠し事
浦島さんの活躍がちらほら聞こえ始めてきたのは、浦島さんとデートしたあの夜から1か月近く経った頃だった。
季節も少しずづ秋めいていて、ビルを吹き抜けていく風がやけに冷たく感じる。
あれから1か月。
結局、何も変わってないな……
『やっぱり、忘れてください』
次のデートの約束もしないまま、また食事に誘いたいと言ってくれたことを拒否してしまった。
あんなひどいこと、自分で浦島さんに伝えたというのに、また行きたいと思ってしまうなんて都合が良すぎるよね。
浦島さんへの想いに気が付いてからというもの、あの日の言葉を何度も思い起こしては後悔するということの繰り返しだ。
かといって、浦島さんにどんな顔して会ったらいいのかすら分からなくって、社内で浦島さんに会わないように、特需販売事業部のあるフロアに出来るだけ近づかないようにしているのだから、自分がどうしたいのかすら自分でもよく分かってない。