イジワル上司の甘い求愛

感嘆にも似たため息を1つ吐いて、見て見ぬふりをしながらキスに夢中の2人の横を通り過ぎようとした瞬間だった。


ん?んん?

艶々のロングヘアに、それからモデルのような身体のライン。

あの彼女、どこかで?


夜風にあたって、随分と酔いが醒めた私の頭がフル回転して過去の記憶を辿る。


アッ、あの人!!

記憶の着地点が見つかった瞬間、私は息を呑んだ。

一気にふわふわしていたアルコールの感覚は消えて、冷たい風がさらに冷たく感じる。


玲美さんだっ!!
浦島さんの婚約者の、あの玲美さんだ。

私は振り返るのが怖くなって、近くの通りに身を隠した。

指先がワナワナと小刻みに震え始める。

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