イジワル上司の甘い求愛
「……さん?」
はぁぁぁぁ。
そもそもいくら社長の一人娘だからって、若いからって、可愛いからって、浦島さんという婚約者がいるのに、他の男性とキスするなんてありえないわよ!!
まぁ、若いと可愛いっていうのは、私の単なる嫉妬だけど。
「……せさんっ?」
浦島さん、知ってるのかな……。
いや、知っているわけないよね。
もし、玲美さんの昨夜のキスのこと知ってしまったら……。
私の中の天使と悪魔が両方から話しかける。
「有瀬さん!!」
「へっ?」
急に声をかけられて、素っ頓狂な声をあげた。
「もう、さっきから声かけてるのになにぼんやりしているんですか?」
「あぁ、ごめん、ごめん」
昨日はほとんど眠ることなんて出来ずに、一夜を過ごして朝を迎えた。
いつものように仕事しなきゃいけないのに、今日はなかなか捗らなくってさっきからミスを繰り返している。
それに一晩ゆっくり考えているうちに、沸々と玲美さんへの怒りにも似た感情が沸き起こってきて、今日はそれを抑えるのに必死だ。