イジワル上司の甘い求愛
私には関係のないことなのに。
『関係ない』
そんなこと分かっているはずなのに、自分自身にそう言い聞かせる度、胸がチクリと痛む。
「内線ですよ。特需販売事業部の浦島部長から」
「へっ?」
意外な人物からの内線に、またもや驚きの声が出てしまう。
2人で飲んだあの夜以来、全くと言っていい程接点だってなかった。
というより、私が一方的に避けていたんだけど。
よりによって、このタイミングで内線がかかってくるだなんて……。
神様は、意地悪だ。
「後で折り返しますって伝えましょうか?」
私の顔色を窺うように、保留の内線電話を持っている濱田君が尋ねる。
「ううん、大丈夫。こっちに回して」
一気にうるさい位に音を立て始めた胸の鼓動を押さえるように、少しだけ息を整えてから私は受話器を取った。