イジワル上司の甘い求愛
◇◇◇
「チャキ、久しぶり~」
卒業した高校から少し離れたところにある、昔ながらホテルで案内された宴会場に入ると懐かしい顔を見つけた。
「かなえちゃん!!」
「チャキ、元気だった?」
かなえちゃんは高校時代の3年間をともに野球部のマネージャーとして頑張った仲間。
高校の頃に比べると少しふっくらとしたかなえちゃんだけど、屈託のない笑顔はあの頃のまま。
「うん、相変わらず。それより、本多先生が還暦なんてビックリ」
「私たちが高校卒業してもう10年だもん。本多先生、もうお孫さんが5人もいるんだって」
今日の主役の本多先生は、私たちが所属していた野球部の監督だった。
当時は熱血漢という言葉がとても似合う、情に厚くて涙もろくて、みんなに愛されていた先生。
去年、野球部の監督は引退したって聞いたけれど還暦だなんてなんだか嘘みたいだ。