イジワル上司の甘い求愛
「そっか、私達だってもう28歳だもんね。かなえちゃんだっていつの間にかお母さんだもんね」


私の言葉に照れ臭そうにしている目の前のかなえちゃんは高校を卒業すると、あっという間に結婚して、既に3人の子供のお母さん。


「チャキは？彼はいないの？東京にはかっこいい男性いっぱいいるでしょ？」

太郎さんの笑顔が脳裏に浮かぶ。

嫌味のない笑顔でにっこりと微笑むかなえちゃんを前に、無理矢理に張り付けた笑顔を作るしかなかった。


そういえば、実家に帰省してすぐにお母さんが待ち構えたように同じことを言ったんだっけ。


この小さな町に比べれば、きっと東京にはたくさんの人がいる。

だけどね、かなえちゃん。

私が好きになったのは、他の誰でもない高校の頃に恋をしていた『太郎さん』だったんだよ。

「いない、いない。出会いなんて意外とないもんだよ」

私は心の声を押し殺して、冗談めかして笑った。

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