イジワル上司の甘い求愛


◇◇◇

浦島さんが婚約していなかったという噂が、いつも噂には疎い企画部にまで届いた週末の金曜日。

私は、定時を超えて来週末までに仕上げなきゃいけない仕事に没頭していた。

浦島さんにきちんとした返事をしなきゃいけないことは分かってる。

分かっているはずなのに……。


浦島さんの所属する特需販売事業部の入るフロアを避けるようにして仕事している私は浦島さんと会うこともなく、そんな時間が長くなれば長くなるほど、さらに浦島さんに会うことへのハードルが徐々に高くなっている気さえしてくる。


返事なんて決まっているはずなのに、私は何を迷っているんだろう。

噂では浦島さんの話題をよく耳にするけれど、実際に会ったのは元旦に初詣で偶然会って告白されたあの時以来だ。


デスクの端に置いている卓上カレンダーをぼんやりと眺めながら、指でもう何日会ってないかを数えてみる。

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