イジワル上司の甘い求愛
一年のうちで何度かある仕事で泣きたくなるほど悔しい思いをグッと押し殺して、終業までの時間を黙々と仕事に打ち込む。
こんな時、浦島さんがいてくれたら……
頭の片隅にふとそんな考えが浮かんできて、私は慌てて否定する。
この2週間で一気に増えてしまったスケジュール帳に貼っているToDoリストの付箋を2枚はがした頃には、企画部のフロアに残っているのはもう私一人になっていた。
そっか、濱田君さっき帰ったんだった。
「コーヒーでも買ってこようかな」
誰に言うわけでもなく一人で呟いて、私は席を立ちあがり廊下に繋がる扉をゆっくりと開けようとした時だった。
「きゃっ!!」
「うわっ!!」
重たいはずの扉が一気に軽くなって開かれたと思ったら、扉の先には見覚えのあるスーツ姿の浦島さんが驚いた顔して立ち竦んでいる。