イジワル上司の甘い求愛
左目から流れ落ちる涙を浦島さんが右手でゆっくりとすくう。

今度は、右目から溢れた涙は左手がすくおうとした。

ゆっくり近づいてくる左手、ふと視界にきらりと光るリングが見えた。

一瞬、たった一瞬のことだったのに。

私は無意識にその左手で涙を拭かれることから顔を背けて拒否した。


浦島さんは、私が顔を背けた驚いた様子で目を見開いたけれど、すぐに理由が分かったらしく指し伸ばした左手をゆっくりと下ろした。


気まずい沈黙が2人の間を吹き抜けていく。


「有瀬さん、もう一度さっきのデザイン見せてくれる?」

2人に流れる重苦しい沈黙を打ち消すように、浦島さんが柔らかな口調で声をかける。

私はゆっくりと頷いて、もう一度デザインをパソコン画面いっぱいに開いた。

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