イジワル上司の甘い求愛
「浦島さんは、どうして今の会社に入ったんですか?」

先に浦島さんの失言をなかったことにしたのは、私の方。

話題を探すのに困って、なんだか採用面接みたいな質問になってしまった。

「あぁ、大学で建築を学んだら全く同じ家でも家具1つで趣ががらりと変わるってことに気が付いた。家と同じようにずっと使えるこだわりの家具を作ってみたくなったんだ」


浦島さんはどこか恥ずかしそうに、だけど照れて答えをはぐらかすわけでもなく、丁寧に言葉を選びながら答えてくれる。

『こだわり』って、いかにも浦島さんらしいな。


視線を泳がせながらビールを一口飲んだ浦島さんにつられるように、私もビールを喉に流し込んだ。


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