イジワル上司の甘い求愛
駅に近づくにつれて、私たちの間の会話はみるみる少なくなった。
きっと明日からまた私たちは『犬猿の仲』に戻るんだ。
胸のささくれが少しだけ痛みを覚える。
あっ、そういえば浦島さん、地元の話1つもしなかったな。
オーナーと地元が一緒で、懐かしい味付けの料理ばかりだったのに、高校時代の話題も地元の話題も2人が口にすることはなかったな。
ううん、それだけじゃない。
4年前の話も、仲が悪くなってからの話だって、過去の思い出話は一つもしなかった。
意識的に避けたのか、それとも無意識なんだろうか。
私は前者なのだけれど、浦島さんはどっちなんだろう。
駅の灯りが見えてきた頃には、なんだかそんなことを気軽に聞ける空気感は2人の間にもう存在してなくて、私は口を噤んだ。