イジワル上司の甘い求愛

本当は通り過ぎようと思っていたのに、やっぱり見たことないような浦島さんの姿を見つけると放っておくことが出来ない。

喫煙ルームの手前に設置された自販機でいつも浦島さんが飲んでいた缶コーヒーを買って、私は浦島さんがいる喫煙ルームに入った。

「お疲れ様です」

「お疲れ様……えっ?!」

奥には資料室しかないから使用する人も少ないこの喫煙ルーム。

そこに終業時間近くなった時間帯に入ってきた人を見て驚いた浦島さんだったけれど、その人物が私だと分かると明らかに動揺した声をあげた。


「浦島さん、これ」

目の前にコーヒーを差し出すと、浦島さんは眉尻を下げて困惑した表情を浮かべて、その表情を隠すことすら忘れてしまっている。

「有瀬さん、どうした?何かあった?」

心配しているのはこっちの方だっていうのに、浦島さんは本気で私に心配した表情を浮かべてそう尋ねてきた。

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