妖怪アパートの問題児と先
3。
「おぅ。遅くなって悪いな。」
教室に入ってきたのは、千晶。
そう。田代たちは知らないが、
カウンセリングの先生というのは
担任であり、生徒指導担当でもある
千晶だった。
『いえいえっ。忙しいですか??』
千晶は柚木の前の席…つまり田代の使っている椅子に横向きで座り、
柚木の方を向いた。
「ん、まぁな。羽川の方も、毎回悪いな。」
『いやっ、こちらこそですよ。』
この時間を提案してきたのは、千晶の方だった。
毎週欠かさずではないが、月に1、2回はこうして時間をとってくれる。
「…で、本題なんだが。…
・・・・・最近はどうだ??眠れてるか?」
千晶がちょっとトーンを下げて問う。
『はい。それなりに寝てます^^』
…………………………
何も言わずに、千晶が柚木を見る。
そのまっすぐで何もかも分かっているような目に、程なくして柚木は折れてしまう。
『・・・・・っ・・・・・
……………はぁ。
・・・・・そうですね。寝てません。』
観念して柚木がはけば、千晶も硬かった表情を少し緩めた
「最初からそう言いなさい。
みてりゃわかんだよ。」
『…はーい。』
ちょっとふてくされたように柚木が唇をとがらせるが、千晶はそのまま続けた
「・・・なんとかならんもんかねぇ。・・」
『なったらいいですよねー。』
まるで他人事な柚木に、若干呆れる千晶である。
さて。
なぜ、不眠症なだけでカウンセリングなんてするのか。
それは、ただの不眠症ではないからだ。
もちろんそれを知っているのは千晶と夕士、そしてアパートの住民の一部だけだ。
ほぼ人に言わなかったことが、
千晶にバレたのは
千晶がこの学校に来てからすぐの事だった。
→ちょっと過去編。