それぞれの恋愛事情
笑顔の花は闇も明るくする
ジューッ
トントントントン
慌ただしい調理をするこの空間は
美味しそうな匂いが充満している
普通の人ならその匂いを嗅いだら
お腹の音がなってしまいそうになるが
今の俺にはそんな余地などなく
忙しなく動いている
「峯岸くん!小野さんがワシは肉はいらんって!」
ふいに調理のうるさい音にも負けない
声がする方に顔を向けると
“疲労”という言葉を知らないような女が笑顔で入口に立っていた
「大丈夫、小野さんには秋刀魚の塩焼きに変えたから」
俺も負けじと超えを張りあげた
「ありがと!」
そう笑顔言った女は
来た道を戻っていった
いつも元気だなー
彼女の笑顔を見て
自然に笑ってしまう俺はただの馬鹿だと思う。
「なーに。ぼーっとしてんだよ!」
ニヤニヤしながらパートの泉さんに
怒られると
我に返りまた調理をし始めた
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