それぞれの恋愛事情


「んー!外は気持ちいいね」

目の前で背伸びをする由香

確かにまだ5月だから夜は肌寒いが
居酒屋のごちゃごちゃした空気よりは外の空気は気持ちよかった


「この会社の人はみんないい人だね!」

突然彼女が言うからびっくりした

「前の会社は利用者をみるんじゃなくて、お金ばっかりだったから、息苦しかった。」

いつもは笑顔の由香は一瞬顔を曇らせた

「でもこの会社にきてほんとによかった。私が求めていた利用者に対して丁寧なケアができる」

あの一瞬の曇らせた顔が嘘のように
明るい顔をした由香


コロコロ表情が変わるな


でも俺にはない清らかな心を持っている

そんな由香にあのことを話したら
俺は変わるかもしれない

なんだかまだわからないこの気持ちのまま
俺は過去の話をした

「俺さーーー……」





話し終わってから俺は後悔した
出会ってまだ1ヵ月の人にそんなおもたい話をしたら引くんじゃないか…


でも彼女は泣いた……

当の本人の俺さえ泣かなかったことなのに

「辛かったね」

それだけしか言わなかった由香

俺もそれ以上言わなかった

いや

言えなかった

あまりにも綺麗な涙を流す由香を
みると凍っていた恋愛に対する心が
音をたてて溶けていく


この時自覚したんだ

人の為に泣く綺麗な心の由香に

俺は“恋してるんだ”って

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