それぞれの恋愛事情
それから人を愛せず疑うことしか出来なくなった俺に由香が現れた
最初の印象は年の割には幼く見えるな
ぐらいしか思わなかった
でも彼女の利用者に対していつも笑顔で明るく
仕事もスムーズにこなす由香に
俺が気づかないうちに俺の凍っていた恋愛に対する心が溶け始めた
そして自覚したのは由香が入社して
1ヵ月が過ぎたころ
職場の飲み会でタバコを吸いたくて
席を外した
「タバコ吸うんだね」
俺はタバコに火を付けたところで由香に声をかけられた
「まぁね。
倉田さんはどこに行くの?」
「少し外の空気吸おっかなって」
酒のせいか少し顔が赤い由香は
ニコニコしながら
外に向かって行った
俺はまだ吸えるタバコを灰皿に
押しつけ由香の後を追った
なぜそうしたか……
その時の俺は分からなかった
でも今思えばもうその時には惹かれていたのかもしれない