雲南伝説胡蝶泉

胡蝶の舞い

中央に仙人、両脇に男の子と女の子。

(女の子)「二人とも蝶になったのね」
(仙人)「ああ、蝶になった。たくさんの蝶は
たくさんの魂かもしれない」

(男の子)「無意味だ!革命前の貧農の暮らしに比べれば、
ブルジョワ的悲恋物語など全く無意味だ」
(女の子)「何言ってるのよ、どんなに世の中が
良くなっても、悲恋物語は無くならないわ」

(男の子)「体制が変われば人の心も変わる」
(女の子)「なんですって、このわからずや!」

(仙人)「まあまあ、人間そのものが変わらない限り、
世の中がいくら変わっても人の心は変わらない」
(男の子)「人の心は変わらない」

(仙人)「そうじゃ、同じことの繰り返しじゃ」
(男の子)「同じことの繰り返し?」
(仙人)「人間生命に宿る宿命を転換しない限り
同じことの繰り返しじゃ」

ー暗転ー

徐々に明るくなる。
下手よりエリート二人が登場。
逃避行のため顔も服も汚れている。

(男)「ここまで来ればもう大丈夫だ」

ふたり、泉を覗き込む。
(女)「まあ、とてもきれいな泉だこと」

女、水辺に降りて泉の水をすくう。
(女)「ねえ、見てみて、とても清らかで美しいわ。
(ひと飲みして)ああおいしい」

男、向こうを見こちらを見て追っ手を見張っている。
(女)「あなたも飲んでみて、とても冷たくて美味しいから」
(男)「ああ・・・」

男、水辺に下りていく。
水をすくいごくりと飲み込む。
(男)「ああ、とても美味しい。
水面が透き通っていて吸い込まれそうだ」

ふたり、目を見合わせて微笑む。
男、立て札に気付く。
(男)「何か書いてあるぞ?」

男、立て札を見つめる。
(男)「『飛び込むなかれ底なしの泉なり。
地下水脈にて死体は二度と上がらない』・・
古い字だなこれは」

(女)「底なしの泉なの?」
(男)「ああ、底なしの泉だ」

遠くで民兵の声。
(民兵1)「足跡があるぞー!こっちだ」

男と女は泉の裏側に回る。
民兵3人が出てくる。

(民兵2)「こんな所に泉があるぞ」
(民兵3)「飲めそうか?」
(民兵2)「飲めそうだ」

民兵1は盛んに付近を捜している。
他のふたりは水を飲んでいる。

(民兵1)「あっ、見つけたぞ!」

民兵2,3急いで身構える。
にじり寄る三人の民兵。
後ずさりする男と女。

(男)「用意はいいか?」
(女)「もちろん!ほかに道はないわ!」
(男)「よし!それっ!」

ふたり、瞬時に泉に飛び込む。
(民兵3)「あっ、飛び込んだ!」

民兵2、飛び込もうとする。
(民兵1)「あ、まて!再び浮上してきた所を
掴まえればよいから、ここで待て。
必ず浮き上がってくる」

民兵三人、じっと武器を構えて待つ。
突然、おどろおどろしい雷の音。

ー暗転ー

稲妻が光り雷鳴が轟く。
民兵三人はひれ伏す。

大きな蝶が二匹、大きくゆっくりと
羽ばたいて泉から飛び出で
上手に消えていく。

その後を無数の蝶が天空を舞い
上手へと消えていく。
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