雲南伝説胡蝶泉

蒙古襲来

森の中を手を取り合い逃げる若者と姫。蔦に絡まり
ぬかるみに足をとられやっとの思いで泉にたどり着く。
二人はのどがカラカラだ。

若者、姫の手を取り泉を覗き込む。
(姫)「まあ、とてもきれいな泉だこと」

姫、水辺に降りて手で泉のの水をすくう。
(姫)「ねえ、見てみて。とても清らかで美しいわ」

姫、ひと飲みする。
(姫)「とてもおいしい!」

若者は向こうを見こちらを見、見張っている。
(姫)「あなたも飲んでみて、とても冷たくて美味しいわ」
(若者)「・・ああ」

若者、水辺に降りていく。水をすくいごくりと一飲み。
(若者)「ああ、とても美味しい。水面が透き
通っていて吸い込まれそうだ」

ふたり、目を合わせて微笑む。
(若者)「何か書いてあるぞ」

ふたり、立て札を見つめる。
(若者)「飛び込むなかれ、底なしの泉なり。
地下水脈にて死体は二度と上がらない。・・か。
ふーむ、とても古い字だな、これは」

(姫)「底なしの泉なの?」
(若者)「ああ、底なしの泉だ」

遠くで蒙古兵の声。
(兵1)「足跡があるぞー、こっちだ!」

姫と若者、泉の脇に隠れる。
森の中から蒙古兵三人が現れる。

(兵2)「こんな所に泉があるぞ?」
(兵3)「飲めそうか?」
(兵2)「飲めそうだ」

蒙古兵1は盛んに付近を捜している。
他のふたりは水を飲んでいる。
姫と若者は身をよじらせながら
泉の裏側へ回ろうとしている。

(兵1)「あっ、みつけたぞーっ!」

兵2,3身構える。
にじり寄る3人の兵。
姫と若者、泉の裏手に後ずさりする。

(若者)「用意はいいか?姫!」
(姫)「もちろんですとも!」
(若者)「それっ!」

ふたり、瞬時に泉へ飛び込む。
(兵3)「あっ、飛び込んだ」

兵2、飛び込もうとする。
(兵1)「待て!再び浮上してきた所を掴まえればよい。
ここで待て、必ず浮き上がってくる」

兵3人、武器を構えて待つ。
突然、おどろおどろしい雷の音。

稲妻が光り雷鳴が轟く。
兵3人ひれ伏す。

大きな蝶が二匹羽ばたいて泉から
飛び出で空にに消えていく。
その後を無数の蝶が天空を舞い消えていく。

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あ夢だったのか治は目覚めた。確かに朝の日差しの中にたくさんの蝶が
舞ってはいるが。眼をこすりながら古びた高札を見た。

『忽翔入水 不再確認 您的遺体』
「飛び込むなかれ死体は二度と上がらない」

ふーむと腕組みしながら古い字体を眺めていると。突然足元が崩れ落ちた。
「わーっ!」
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