風変わりなシュガー


 あまりに日焼けしすぎてヨロヨロで帰ってきた私を、店の主である市川さんは驚き呆れながら迎え入れた。

 そして冷やすために氷嚢を作ってくれてソファーに寝転ぶ私の背中においてくれつつ、苛めるのだ。

 海から上がった時には既に後悔していた私。ああ、どうしてちゃんと海に入って体を冷やしておかなかったのだろう!って。結局浮き輪の上に寝転んだままで、背中もお腹も平等に焼いてしまった。同じくらいの時間ずつ。お腹が温まったから、今度は背中をあっためようって。

 やっぱり馬鹿なのかもしれない。

「当分刺激物は控えないとダメだよ、これ。肌の手入れは熱がひいてから。そんで、ビタミンを多く食べないと」

 馬鹿だ馬鹿だと繰り返しながら、市川さんはハチミツ檸檬を作ってくれる。

「ほれ、これでも飲んで、アロエパックでも載せときな」

 そしてやっぱり馬鹿だ馬鹿だといいながら、お風呂に入りに行ってしまった。

 ・・・ガックリ。

 私は全身の痛みに耐えながら、涙目でハチミツ檸檬をすする。

 この日焼けはいつ落ち着くだろうか。というか、私は今晩眠れるのだろうか?

 明りを落とした店の中は静かでほの暗い。

 市川さんが趣味で集めている沢山の蝋燭。店の中に散らばっているランプのいくつかに火をいれてくれていて、そこだけがぼんやりと光を放っている。ヨーロッパのウッドハウスをイメージして作られた内装に、たまに和風のものが存在を主張している、不思議に落ち着く空間。明るすぎず、暗すぎないこの店は、一目みたときから私のお気に入りになった。


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