風変わりなシュガー
景色や環境は素晴らしい。が、それが故に周囲には何もなく、不便と言えば不便。いやいや実際のところ、もんのすごーく不便。市川さんはバンとバイクがあるのでそれでいいと思ったそうだけれど、免許も持たない私がここへ来るのには難儀したものだ。
だって最寄のバス停から15分だよ、両側から植物が迫り来る細い細い土の道、山道といって大正解の道を。そのバスだって、午前と午後に2本ずつしかないし。
というわけで、ここにきてまず第一に、市川さんが私に買うように言ったのは、自転車だった。それも格好いいロードバイク。不便でしょ、って。でも俺は金出さないからね、メグちゃんがバスでいいならそれでもいいけど、って。
・・・・困る。
そう思った私はいわれたとおりに自転車を買った。予算の都合でロードバイクではなかったけれど、それなりの自転車を。いい買い物だった。だけど休日に遠出することも含めて、その自転車は私の大事な足になってくれている。
名前はチャーリー。だってチャリだから。
「海には泳ぎにいきなよ、メグちゃん。そもそも一体自分、あそこに何しに行ったの?」
市川さんがサンドイッチを作りながら私にそう聞いた。
彼は、たまーに関西弁が出る。普段はそんなことがないのに、気を抜いたときとかに、突然。相手を指して「自分」と呼びかけるのも、それだ。
私はお盆を抱えたままでぶーぶーと口を尖らせる。